神に選ばれなかった者達 後編

普段の李優は、学校で夢の中の話はしない。

隠してると言うより、夢の中は夢の中、現実は現実と、意識的に区別して考えているようだった。

偉いね。

その李優が、敢えて真っ昼間に夢の中の話をするのだから、これは真面目に聞いた方が良さそうかな。

萌音はいつも真面目だけど。

「昨日『処刑場』で、お前とみらくが言ってたこと…」

「うん」

萌音は、昨日の夕方の出来事を思い出した。

響也君と、みらくちゃんのことだ。

二人は、病院の悪夢を見るようになった二日目以降、『処刑場』に現れなくなった。

李優や空音兄妹、ふぁに君達がいくら『処刑場』で二人に呼びかけても、駄目だった。

夢の中で会うことも出来ないし、『処刑場』にも現れないことから、随分と心配したものだ。

しかし昨日の夕方、みらくちゃんが『処刑場』に現れた。

そしてそこで、二人が今どういう状況なのか聞いた。

理由は分からないけど、響也君は毎日のように、手術台の上で殺されている。

死ぬのは痛いよね。誰だって。

それだけでも、響也君の苦痛は推し図れるというものだが。

毎日エンドレスで殺されてるなら、きっと彼の現実への「侵食」は並大抵のものではなくなっているだろう。

早急に、何とかしなければならない。

毎晩のように殺される響也君を見ながら、一人で怯えていたみらくちゃんは。

助けを求めるかのように『処刑場』に現れ、現状を教えてくれた。

うん、それは分かった。

分かったけど。

誰もが心配と慰めの言葉をかける中で、萌音は一人、別のことを言った。

みらくちゃんに、「君は何をしているのか」と聞いた。

萌音は、響也君とみらくちゃんが『処刑場』に姿を現さなかった間も、二人に声をかけることはしなかった。

何でか、って?

だって、李優が毎日声をかけてたし…。

それに、助けを求めるでもなく、かと言ってこちらの呼びかけに答えることもない。

ならば、どうなろうと本人達の自己責任だろうと思って。

だから、萌音の方から声をかけることはなかった。

でも昨日は、みらくちゃんが『処刑場』に現れて。

響也君が毎晩殺されていることを知って、響也君のことを気の毒だと思うと同時に。

みらくちゃんは毎晩それを見ながら、何をしているのかが気になった。

響也君が殺されてるんでしょ?目の前で。

で、君は何をしてるの?

黙って見ているだけ?怖くて怯えてるだけ?

響也君は、みらくちゃんを守る為に捕まったんでしょ?

なら、響也君の苦しみは、みらくちゃんにも責任がある。

そう思ったから、萌音は自分の思ったことを素直に言葉にして、『処刑場』に書き込んだんだけど…。

「李優、萌音は何か間違ったことを言ってるのかな」

「…萌音…」

萌音は自分が間違ったことを言ってるとは思っていなかった。

だから、素直にそう口にしたけど…。

それは萌音の意見であって、他の人も萌音と同じように考える訳じゃないだろう。

…多分。