神に選ばれなかった者達 後編

…の、だが。

「ないねー。エスカレーター…」

「いや…エスカレーターはなかなかないだろ…。病院には…」

え、そうなの?

「あるならエレベーターじゃないか」

「そっか。じゃあエレベーター」

「死体をここまで運んできてるんだから、何処かにはあるはずだが…」

そうだよね。

昨日、ストレッチャーを運んでる人、いたし。

あれを運ぶ為のエレベーターが必要だよね?

あるいは階段…だけど。

ストレッチャーを運びながら階段の登り降りは、なかなか大変そう。

じゃあ、やっぱりエレベーターかな?

「エレベーター…。…エレベーター…」

エベレストを登山する人はエベレーター、なんちゃって…。

と、頭の中でつまんないことを考えていると。

「…萌音、あれ」

「ほぇ?」

李優が先に、何かを発見。

ごめん。萌音違うこと考えちゃってた。

李優が指差す方を見ると。

そこには、大きな観音扉。

あれって…えべれ、じゃなくてエレベーター?

扉の横に、ボタンらしきものがついていた。

やっぱりエレベーターだ。

「良かった、見つかったね」

「あぁ…それは良かったんだが…」

…だが?

李優は、そのエレベーターの扉に近づいた。

そして、険しい顔でエレベーター横のボタンを見つめていた。

「どうしたの、李優?」

「…これ、見てみろ。ロックがかかってる」

…ほんとだ。

たかがエレベーターなのに、指紋認証式のロックがかかっていて。

それをクリアしなければ、いくらボタンを押しても反応しなかった。

おまけに、指紋認証パネルにまで、頑丈そうな南京錠がつけられていて。

指紋認証パネルに触れる前に、その南京錠の鍵を開けなければ、そもそも指紋認証の段階に進めないようになっていた。

二重ロックとは…。…やるね。

きっとこのエレベーターを造った人は、自転車には鍵だけじゃなくて、チェーンもつけるタイプなんだろうな。

備えあれば憂いなし、ってね。

だけど…これだけ厳重に締め出されていては、エレベーターを使って移動するのは難しそうだ。

「成程な…。響也が言ってたのはこういうことだったのか…」

そうだね。響也君の言う通りだった。

フロア間の移動は出来ない、って…。

「念の為、階段も探してみよう。もしかしたら、階段の方は使えるかもしれない」

「うん」

エレベーターがあるってことは、近くに階段もあるんじゃないか、って思って。

二人で手分けして、エレベーターの近くを探し回った。

正直、望み薄だったけど。

だってエレベーターがこれほど厳重に守られてるなら、階段だって同じように鍵がかけられてるはずだ。

それでも万が一の可能性があれば…と思って、探してはみたものの。

鍵がかかってるどころか、どれほど探しても、階段は見つからなかった。

どうやらこのフロアは、エレベーターしか存在しないらしい。

…うーん。

…萌音達、このフロアに閉じ込められちゃった、ってことでOK?