神に選ばれなかった者達 後編

萌音の人生で最初の敵は、ワームだった。

ワームって知ってる?魚釣りとかで使う、うねうねしたミミズみたいなの。

あれの、でっかいバージョン。

釣り用のワームは指の先くらいの大きさしかないけど。

夢の中のワームは、軽く大型トラックくらいの大きさはあった。

ぐにょぐにょうねうねしてて、凄く気持ち悪かったな。

それだけ大きかったら、きっと動きは遅いだろう、って思うでしょ?

意外とそうでもないの。

萌音よりずっと足(…?)が速くて、動きが機敏で。

萌音を見つけるなり、その巨大ワームは滑るように迫ってきて、萌音の身体に巻き付いて。

蛇が獲物を絞め殺すように、萌音の全身の骨をバラバラに砕いた。

パキッパキッって音がして、自分の骨が砕ける音が聞こえるの。

それに、内臓が押し潰されて、ぺしゃんこになって。

一瞬にして、萌音は軟体動物みたいに身体中へにゃへにゃになった。

そして、動かなくなった萌音を、美味しく、ぺろりと食べちゃうの。

あれは痛かったなぁ。

毎晩のように、そんな風に食べられて、食べられて…。

だけど、萌音には戦う為の武器もない。

そんな萌音を助けてくれたのは、天使の声だった。

その天使に導かれるように、萌音はバケモノの攻略法を編み出した。

と言っても、大したことはしていない。

巨大ワームは、でっかくてうにょうにょしてて、その割には動きが素早くて気持ち悪いけど。

でも、水が苦手だったらしくて。

そのことに気づいた萌音は、近くにあった湖にワームを誘導した。

萌音に飛びかかってくる瞬間、萌音は湖に飛び込んだ。

勢い余ったワームも、同時に湖の中にぼちゃん。

湖の深さはそれほどでもなくて、萌音の腰の辺りまでしか水が入ってなかった。

おまけに泥水で、口の中に水が入った萌音は、思わずゴホゴホ吐き出してしまったけど。

それでも、水が苦手なワームには、効果てきめんだった。

浅い水の中で、巨大ワームは苦しそうにのたうち回っていた。

あんなに大きなナリをしてるのに、泳げなかったらしい。

巨大ワームが溺れている間に、萌音は湖の岸に這い出した。

振り返ると、ワームが湖の中で暴れ回っていた。

その姿を、萌音は呆然としながら見つめていた。

ワームは、最後にひときわ大きく、湖面を殴りつけてから。

糸が切れたみたいに、静かになった。

そして、そのまま動かなかった。

あ、死んだ。って思った。

これが、萌音の記念すべき初勝利だった。