神に選ばれなかった者達 後編

萌音が人生で初めてバケモノをこの手で殺したのは、生後7日後のことだった。

何せ生まれてきたその翌日から、悪夢を見るようになったのだから。

ちなみに、現実では、まだ生まれたての赤ちゃんだった萌音だけど。

夢の中では最初から、今と同じ大人の身体だった。

でなきゃ、さすがに戦えないもんね。

でも武器はなくて、萌音はいつも、夢の中でその辺に落っこちているものを、武器として使っていた。

萌音は最初、戦えなかった。

当たり前だよね。

身体は大人のものでも、中身は赤ちゃんのままなんだから。

何が何だか分からなくて、怖くて泣いた。

…だけど。

「…大丈夫」

蹲って泣きじゃくる萌音の頭に、ぽん、と手を置いてくれる人がいた。

「傍に居るから…。ずっと傍に居るから。一人じゃないから、大丈夫…」

今でも置いてくれる。

その時の優しい声。その時の温かい手。

これまでずっと、悪夢の中で萌音を優しく導いてくれた人。

それは萌音の、萌音だけの天使だった。

その天使に導かれて、萌音は次第に、悪夢を攻略することが出来るようになったのだ。