屋上にて、君へ

…何これ体が誰かに操られてるみたいに言うこときかないし、


こんな歌、

知らない……。






そのままあたしはワケもわからず3分程歌って曲を終わらせた。



今までに聴いたことない拍手の渦が、あたしを包みこんだ。

巡回中のお巡りさんも、自転車を止めて拍手をしている。

「すっ……すごいです! 即興でこんなすごい歌が出来ちゃうなんて……あの今度はいつ公園に来るんですか?!」

女の子が、興奮した小さい肩を揺らせて尋ねてきた。

他の観客も同じような事を何度も聞いてきた。


あたしは路上で歌うパフォーマーか何かと間違えられているみたいだ。

「いやその」

「じゃ……じゃあ明日もまた来ます! 明日は友達も誘ってきま――」
 
「あっー、その、あたしそろそろ帰らなきゃ! 夕御飯の時間だし。それじゃ、またね!」

特別家に急いで帰る必要もなかったが、なんだかあの場の空気が別世界のような感じがして、逃げ出してきてしまった。


この突然変異は何なの?

耳の奥ではまだ拍手の音の残骸が響いていた。

「……ドッキリとか?」
あたしは何度も背後を確認しながらにやついた頬をつねり、どきまぎ小走りで家へと走った。