五分後――。
「千夏ー。梨佳ちゃん来たわよー」
一階から、ママのよく通る声が聞こえてきた。さすが元・売れっ子アイドル。
「はーい。ちょっと梨佳迎えにいってくるね。あっ、シオたん紅茶とオレンジジュースどっちがいい?」
「えーと……じゃあ紅茶で。ありがとちぃちゃん」
どんな些細なことに対しても、「ありがとう」ってナチュラルに言えるシオたん。もしあたしが男だったらこんな奥さんが欲しいなとしみじみ思う。
一階に降りると、玄関前に梨佳が立っていた。
案の定、ものすっごい暗いオーラを放って。人間二人くらい簡単に呪い殺してしまいそうなくらいの沈んだ目をして、ブツブツと独り言を言っている。
「しばた……しばた……」
「梨佳ー、お疲れさん。まぁ二階でゆっくり話を聞こうじゃないか」
「しばた……潰すしばた……」
いま、恐ろしい単語が聞こえたような。こりゃ重傷だ。
「りっ、梨佳、今日のおやつね、なんだと思うー?」
あたしは無理矢理明るく話題を変えようとした。
「しばた……」
「“しばた”はおやつにならないよ多分! なんとぶんぶん堂の抹茶カステラだ!!」
「さっ、二階に行きましょう行きましょ。ぶんぶんぶーん」
「切り替え早っ!!」
もしあたしが男だったらこんな奥さん絶対に嫌だなとしみじみ思った。
「千夏ー。梨佳ちゃん来たわよー」
一階から、ママのよく通る声が聞こえてきた。さすが元・売れっ子アイドル。
「はーい。ちょっと梨佳迎えにいってくるね。あっ、シオたん紅茶とオレンジジュースどっちがいい?」
「えーと……じゃあ紅茶で。ありがとちぃちゃん」
どんな些細なことに対しても、「ありがとう」ってナチュラルに言えるシオたん。もしあたしが男だったらこんな奥さんが欲しいなとしみじみ思う。
一階に降りると、玄関前に梨佳が立っていた。
案の定、ものすっごい暗いオーラを放って。人間二人くらい簡単に呪い殺してしまいそうなくらいの沈んだ目をして、ブツブツと独り言を言っている。
「しばた……しばた……」
「梨佳ー、お疲れさん。まぁ二階でゆっくり話を聞こうじゃないか」
「しばた……潰すしばた……」
いま、恐ろしい単語が聞こえたような。こりゃ重傷だ。
「りっ、梨佳、今日のおやつね、なんだと思うー?」
あたしは無理矢理明るく話題を変えようとした。
「しばた……」
「“しばた”はおやつにならないよ多分! なんとぶんぶん堂の抹茶カステラだ!!」
「さっ、二階に行きましょう行きましょ。ぶんぶんぶーん」
「切り替え早っ!!」
もしあたしが男だったらこんな奥さん絶対に嫌だなとしみじみ思った。


