屋上にて、君へ

帰り道、あの“スズメバチ軍団”とは、運良く遭遇しなかった。


いや「させなかった」と訂正しよう。

と、言うのも


それは、ほんの五分前――。







「ちっ、ちぃちゃ……待ってよ~なんで走るのー?」

「ゴメンシオたん! 家に着くまでが戦いだから」

「えー……と、ちいちゃん誰かと戦ってるの?」


「そっ! グルグルの巻き巻きのスズメバチ女とね」

「グルグル……うんわかった。あたしも頑張る!」








ってかんじでシオたんを巻き添えに、無理矢理家まで走らせてしまいました(シオたんゴメン!)


でもあの軍団に捕まってしまったらジエンド。


梨佳曰わく、

「嫌われるよかマシじゃない」


とか言ってるけどさ、そういうレベルじゃないんだもん、あの熱量。


そして無事、我が家に到着。


「た……たらいまぁー」

「ハァハァ、おっ、おじゃましまぁふ」

あたしとシオたんは玄関で力尽き、自分達のバテぶりに顔を合わせてクスクスと笑った。