屋上にて、君へ

もうダメだ。あと10メートル。



10対1じゃ袋の中のネズミ! あと7メートル。


山田千夏、17歳。

長いようで短い人生でした。

ありがとうパパ……ありがとうママ……。

あと5メートル。


よし、せめて土下座して謝ろう。


「しゃしゃって、すいまっ――……」


「キャーキャーキャー」

「あぶぶぶぶ」


女子軍団の波に押しつぶされ、あたしの周りは完全包囲。四面楚歌とはまさにこういう状態を言うのね。

まもなく聞こえてくるのか、悪魔の歌が。


そして振り振り、

幸福の旗ならず

降伏の旗。



「今日、中庭で歌ってたの……あなたですよね?」

ネクタイの色と、髪の巻き具合からそれらが全て三年生(上層部)であることを悟った。

「は、はい……」

あたしきっとコンクリートに埋められてそのままインド洋に沈められる。

両膝は恐怖で震え、外れてしまいそうだ。