屋上にて、君へ

なんじゃこりゃ……


あたし今めちゃくちゃ悪者でないか?

あたしはそのまま何も言わずに、目線を床に下ろした。せめて……五限目の終刻のチャイムさえ鳴ってくれれば。

ごくナチュラルに退散できるのにぃ。




ああ、あたし……本当に神様に見放されたんだ。

王子もきっと呆れてるよ。明日から肩身の狭い生活が――

「よし!」


急に何かを決したかのように、王子が立ち上がった。

そしてあたしを秘技『不敵な笑み』で硬直させて


「よいせっと」

「っっっ!?」


あたしの腰に手を回し、そのままひょいっと米俵でも担ぐかのように持ち上げた。


「それじゃあ嵩原先生。このチビっこ借りますんで」

「はいはい、どーぞ」


「なっ、人さらいぃぃ! キャー!」


あたしは王子の背中を叩きながら抗ってはみたものの、力の差は歴然。

「ハルしぇんしぇーい」

「フフフ、健全健全!」


「NOー健全チガーウ!!!!」


そしてあたしはそのまま無事、五限目の物理を回避。

王子にさらわれた。