屋上にて、君へ

「やぁ」

「ううっ、なぜここに……」

あたしの中の自己防衛機能が瞬時に働き、とっさに鼻から口元を両手で隠した。


保健室に入って来たのは、紛れもなく王子。

普通、マンガとかドラマとかならこのシーンって最高に羨ましい設定じゃない?

だけどさぁ、なぜに鼻血。神様、そんなにあたしのこと嫌いなんですか?

「せっ、先輩。授業は出なくていいんですか?」

「うーん、いいんじゃない?」

そしてニコッと。ででで出たーー!

王子スマイル!


しかし今、あたしだけに向けられてるこのスマイルに、素直に喜べないのが実に痛い。

だって今鼻に綿詰められてんだよ?

絶対今見られたよねぇ!?

今心の奥底で笑ってるよねぇ!?


はぁ、もう最悪……


「思い出したよ」

王子は保健室のパイプイスに浅く腰掛けて、あたしを見つめながら言った。

「なっ、何がですか?」

「キミ、始業式にフリスビーのおまじないに失敗して顔面にぶつかっちゃって、鼻血流して泣いてた子だよね?」

「!!」

なんと……覚えてたのか。(フリスビーのおまじないはやってないけど)