すごい……本当にこれ
あたしの声なの?
体全部が歌声で響いてる。こんなに気持ちがいいなんて……
「すげぇ……なんだこの子」
「キレー」
「カッコイい!」
「あれC組の山田さんじゃん」
「えっ、こんな奴二年にいたっけ?」
人が人を呼んで、中庭にいる生徒がどんどんベンチ周りに集まってきた。
すると、王子が突然演奏を止めてギターを下ろし、あたしの手を握った。
「今日の演奏はここまで! 以上、軽音部ギター・アイザワとヴォーカル……えーっと、キミ、名前は?」
王子があたしに言った。
「やっ、山田千夏です」
「えー、ヴォーカル・チナツちゃんでした!」
王子がどこぞやのMC風に幕を閉じると、中庭に大歓声が沸き起こった。
その観衆の中、あたしにスナイパーのような目光線を送る女子(おそらく王子ファンの上層部)もいるけど、みんなすごい楽しそう。
ナルホド
誰からも人気のある理由が少しだけ分かったよ。すごいカリスマ性。
みんなバラバラだった中庭が、今ひとつになってるんだもん。
そして……えっ、ちょっとちょっとちょっと待てよ?
ヴォーカルって……


