――歌って――
「えっ?」
空耳?
今女の子の声が聞こえたような……“歌って”って。
あれ?
なんか体の感覚が段々無くなっていくような……
みんなの顔も
景色も歪んでいく。
全部バラバラになっちゃいそうなこの感覚。
金属がこすれ合うような奇妙な音。
――そうだ
あの時と同じ
あの時、公園であたしが歌った時と同じ感覚だ。
もしかして……また?
ただ鮮明に残るのは、ギター王子の奏でるギターの音色。
このメロディーはどんなメロディー?
愉快で楽しい歌?
滑稽な歌?
いや違う。
その裏側に見え隠れする悲しみ。
それを歌うんだ!
あたしの中で何かスイッチが入ったみたいに、頭の中でメロディーが踊り出す。
そしてあたしはまた、あの時と全く同じようにベンチに乗り上がり、口を開いた。


