カツン、とまた響いた。
「ねぇ、どうしてあんなことができたんですか? どれだけ苦しんだか、わかりますか?」
上着の、ボタンの数までわかるくらいに近づかれた。
それでも私は動かない。
「こうでもしないとわかりませんか?」
視界が空へと動く。
数瞬の浮遊感。
それから全身の痛みと共に、意識を失った。
話し終えると、伊月さんは「そうか」と首肯した。それがどういう意味なのか、上手く伝わったかどうかわからなくて、もう一度口を開こうとした。
「つまり、君は……消えてしまいたかったんだな。この世界から」
「違います!」
また起き上がろうとしてベッドに戻る。我ながら学習能力がない。
それでも否定したかった。
「それは逃げです。私は一人で静かに生きて、誰にも看取られずに終わらせたかっただけで……」
「だから俺からも逃げたと」
「いいえ、冬原さんと幸せになってほしかっただけです」



