騙すなら墓場まで




 それでも当たり障りない挨拶を交わしたあと、彼女は俺と目も合わさずに二階へと引っ込んでしまった。


 ──娘のことをどう思うかね?


 坂崎の問いかけに、俺はその顔を素早く確認した。何かを期待しているようで、否定してほしいような、そんな矛盾した表情。

 俺は一拍置いてから口を開いた。


 ──そうですね……とても純粋な方に見えました


 二階を見上げながら、どこか不安そうに低めの声で伝えてやる。坂崎は俺の返答を聞くと、ソファーに座り込むと目頭を押さえた。


 ──やはり君もそう思うか


 それからは奴の昔話を延々と聞かされた。

 母親は身体が丈夫ではなくて、彼女が幼少の頃に亡くなってしまったこと。妻の忘れ形見である一人娘にはできる限りの愛情を注いできたこと。これからも何不自由なく過ごしてほしいこと。

 切々と語り続ける仇に、俺は憤りを感じなかった。自分でも驚くほどに。