騙すなら墓場まで




 初めて坂崎の自宅に呼ばれたとき、チャンスだと思った。

 もしかしたら証拠は全て自宅に保管されているのかもしれない。その線を考えるようになっていたからだ。


 ──ちょうど良かった、紹介しよう


 豪勢な自宅に荒みそうになる。その気持ちを手のひらに爪を立てることで抑え、微笑みを作って門を潜った。自慢話は右から左に流す。

 リビングに案内されるのと同時に、坂崎が二階へ声をかけた。会社ではまず聞かない甘く柔らかな声に吐き気を催しそうになる。


 ──うちの娘だ。さ、美節、ちゃんと挨拶なさい


 呼ばれて降りてきた娘は、俺を一目見るなり顔を耳まで赤くしてうつむいてしまった。女性からは大抵の場合、肉食獣のようなギラギラした瞳を向けられてきた俺にとって新鮮な反応だった。

 ひと昔前の女性だってここまで初心な姿にはなるまい、と突っ込みたくなるやら、坂崎の娘が思っていたより良い人そうで驚くやら、俺は混乱した。

 おかしいな、どんな捜査でもここまで掻き乱されることはなかったのに。