しまった。目的を忘れるところだった。
眉をひそめる伊月さんに怯まないよう、勢いでお弁当が入ったバッグをずいっと突きつける。
「これは?」
「お昼のカレーです」
伊月さんは表情を変えず、代わりに植田さんの顔がパァッと明るくなった。
「良かったじゃないですか、警視正、いっつも抜くか栄養ドリンクばっかりですもん」
「植田」
「ていうか、どうして奥さんがいるのみんなに知らせなかったんですか? 独身の子たちにグイグイこられるの嫌がってたのに」
「う・え・だ」
地の底から響くような怒気に、植田さんだけでなく私まで息を呑む。これは受け取ってもらえないかもしれない。どうしよう。最終手段としてあの受付の女性に預けて……。
「関係の、ないことを、ベラベラ、しゃべるんじゃ、ない」
植田さんの肩を両手でがっしり押さえつけ、目を開いて顔を近づける。
コクコクと壊れた赤べこ人形のような動きで植田さんは真一文字に引き結び、回れ右をすると走り去っていった。



