騙すなら墓場まで




 勝手に傷ついて良いものじゃない。

 そっと椅子に座り直し、二人が戻ってくるのを待つことにした。何も聞いていない体で振る舞えるよう、余計な発言は控えよう。


「奥様」

「正恵さん? 伊月さんは?」


 彼の気配が全く無い。もしや……と思い正恵の表情をうかがう。


「その、仕事があると」

「……そういえばそこそこ時間が経ってましたね」


 申し訳なさそうに視線を下に向けてしまった正恵さんに、私はある提案をしてみることにした。


「スープジャーみたいなのに入れて持っていきたいんですが、ありますか? 受付の方に預かってもらいます」


 正恵さんは嬉しそうに頷いてくれた。


「準備いたします! 少々お待ちください」


 良かった。この家にスープジャーはあるらしい。パタパタと足音がするのと同時に、「奥様は召し上がってください!」と張り切った声が届いた。

 私はお言葉に甘えてサラダとカレーを噛み締める。うん。これなら冷めても美味しいはずだ……たぶん。