騙すなら墓場まで




 バタバタと足音が聞こえてくる。誰かが警備員さんか警察を呼んだらしい。


「離して! あの女追い出して! 私じゃない!」


 声が遠くなっていったから定かじゃない。それでも確かに聞こえてきた罵倒に、私は口の中がカラカラに乾いていくような感覚がした。


「正恵さん、次にもし来たらすぐ通報するようコンシェルジュに連絡してくれ」

「わかりました。何も話さずすぐ連絡します」


 ……この状況からして、あの女性はこのレジデンスを何回か訪れたことがあるのだろう。

 でなければ、コンシェルジュさんや警備員さんが常在しているのに入り込めるはずがない。

 そして会話の内容から察するに……彼女は、お父さんの被害者だ。きっと何度かこの部屋で相談をしていたんだろう。

 それだけじゃない。きっと伊月さんは。



 伊月さんと、あの女性は。



 そこまで考えて首を振った。私が干渉して良いことじゃない。