騙すなら墓場まで




「……手の荒れを治したいんじゃなかったのか?」


 伊月さんの声が低くなる。目にも鋭さが加わって尋問を受けている容疑者の気分だ。


「手袋をつけて料理しました、手荒れは悪化していないはずです」

「どうして今になって料理を?」

「昨日のお礼です」

「お礼? 何のことだ?」

「ソファーで寝ていた私をベッドに運んでくれましたよね? そのお礼です」

「そうか」


 伊月さんの眼差しは相変わらず射抜くようで読めない。この行動に喜んでいるのか、怒っているのか。そもそも何とも思っていないのか。


「とりあえずお二人とも席にどうぞ」


 見かねた正恵さんが助け舟を出してくれた。伊月さんは黙って椅子に座ったので、私もそれに倣う。


「奥様が旦那様の好物を教えてほしいって仰って、丹精込めてお作りになったんですよ?」


 言外に「何か言うことあるでしょう?」と圧をかけてきている……気がする。