騙すなら墓場まで




 ベッドまで運んでくれたお礼もだけど、現状はどう考えても報復とは言いがたい。

 私に家事を押し付けず、正恵さんに全てやってもらっている。

 手の荒れは正恵さんと協力して治してくれている。

 クレジットカードを渡す。

 外に出ても、誰と会っていたのか聞いてくるだけで外出禁止にはしてこない。


「意味がわからない……」

「奥様?」


 振り返ると、カバンを抱えた正恵さんがそこにいた。


「正恵さん、ちょっと待ってくれ。夕飯を食べたら──」


 伊月さんがため息混じりに廊下の奥から歩いてきて、私がいるのに気づいたのか口が半開きのまま固まる。


「……夕飯を食べたらすぐ出るから、カバンは玄関に置いてくれ」

「そう言っていつもゼリーだかお菓子みたいなものばっかりじゃないですか」


 それに、と正恵さんにニコニコで目配せされる。


「今日は奥様の手料理なんですよ」

「手料理?」

「はい、カレーです」


 私はレストランで案内する従業員のように、ダイニングテーブルを指し示した。