騙すなら墓場まで




 正恵さんから教わったカレーを盛りつける。おたまが震えてお皿が汚れないようゆっくりと。サラダや水の用意も万全。いつでも迎えられる。


「奥様、バッチリです!」


 正恵さんの後押しに気持ちが落ち着く。一年間、自活していたおかげか料理はそれなりにできるのが幸いだった。

 伊月さんが子どもの頃から好きだったメニューをできる限り再現してみた。これで話のとっかかりを作れるかもしれない。そう願う。


「正恵さん、手袋ありがとう」

「良いんですよ、必要なものがあればいつでも仰ってください」


 調理用の手袋を外してテーブルを見やった。テーブルクロスも食器もピカピカで、テレビドラマの撮影みたいだ。


「旦那様もきっと喜ばれますよ」

「そうだと嬉しいですね」

「そうに決まってますよ」


 早くきませんかねぇ、と正恵さんが玄関の様子をうかがいに行く姿を見ながら、私はどう自然に席を外してもらえるようお願いできるかを考えていた。