騙すなら墓場まで




 ふわりと意識が浮き上がる。


「ん……?」


 いつものベッドなのに何かがおかしい。

 寝ぼけたまま辺りを見回す。サイドチェストにメモが残っているのを見つけ、手を伸ばした。



 ──寝るならベッドで寝るように。



 昨日の出来事が一気によみがえって、身体全部が覚醒した。


 やってしまった。


「奥様、おはようございます」


 正恵さんがノックをして入ってきた。固まっている私を見て、不思議そうに近寄る。


「どうかなさいましたか?」

「……伊月さん、今日の予定は?」


 震えないようにお腹に力を入れる。正恵さんは申し訳なさそうに目を逸らした。


「……今日は夕飯だけはうちで食べると」

「そう、良かった」


 私の返答に正恵さんはきょとんとした表情を向けてきた。


「奥様……?」

「正恵さん、お願いがあるの」


 私がベッドの上で正座したのを見て、正恵さんも居住まいを正す。


「私に料理を教えて」