騙すなら墓場まで




 あれこれ悩みながらお風呂を済ませ、正恵さんに手のケアをしてもらう。最初は抵抗があったけれど、自分が言い出したことなので大人しくすることにした。


「それでは、私は失礼させていただきますね」

「はい、明日もよろしくお願いします」


 正恵さんを見送ってきっかり十分後、私は自室のクローゼットを開けてハンドバッグを取り出した。深い呼吸を意識しながら封筒を手にして、ゆっくり封を開ける。

 便箋には右肩上がりの字が刻まれていた。懐かしいお父さんの字だ。

 内容は私を心配するものばかりだった。身体を大切にしてほしい。自分のせいですまない。そればかりを繰り返し伝えていた。

 手紙を読み終えて封筒に戻すと、サイドチェストの引き出しを開けた。奥のほうに手紙を置いて、その上に本を重ねる。

 これでわからないはずだ。

 だけどもっと良い隠し場所があるかもしれない。