騙すなら墓場まで




 伊月さんは自分の評判を落とすような真似をされるのが嫌なんだろう。だから私が勝手に動くと困る。それだけだ。


「伊月さんは元から厳しい人ではなかったんですか?」


 ここまでワーカーホリックではなかったと初めて会ったときに聞いたことがある。それならあの冷厳とした態度もそうなのだろうか。

 正恵さんは眉を八の字にしながら、ほうじ茶が入っていたマグをトレイに乗せた。


「坊っちゃんが得留の家に来てからお世話させていただいてるんですが……とにかく一直線というか、ひたむきな方でしたね」

「夢のために、ですか?」


 正恵さんが一瞬だけ固まった。


「……ええ、ひたすらに勉強や運動に打ち込んでました」


 ああ、そうか。

 正恵さんは伊月さんの身に起きたことを知っている。


「周りの大人はいつも心配してましてね……ご友人を作るよう勧めてみたり、遊びに連れ出してみたり、色々なさったんですよ」

「それで……その効果は……」

「……あったように見えたんですけどねぇ」