騙すなら墓場まで




「奥様、バッグをお預かりします」


 一瞬どうしようか迷って、預けることにした。彼女なら中身を見たりしないだろうし、すぐに部屋に戻してくれるだろう。

 正恵さんは思った通りハンドバッグを持って私の部屋のほうへと向かった。本当なら今すぐにでも手紙を読みたかったけど、正恵さんが帰ってからのほうが良いだろう。

 さりげなく時計を見た。正恵さんが帰るまであと数時間はある。それまで私は自然体を演じきれるか……ううん、演じなければならない。

 私はソファーに深く腰掛けた。大丈夫、いつものようにしていれば不審がられることはない。


「正恵さん、さっきは庇ってくれてありがとう」


 戻ってきた彼女にお礼を言うと、正恵さんはにっこり笑って「良いんですよ」と首を振った。


「あれは旦那様が悪いんです。妻が数十分だけ外に出るのも許さないなんて」

「心配してるんですよ」


 曲がりなりにも警視正の妻だ。私の行動次第で彼の評判が変わってしまう。