騙すなら墓場まで




 それだけは絶対に避けなくては。

 私は挑むように彼の瞳を見返した。それで怖気づく……ようなことはなく、冷静な声が玄関を支配する。


「萩野さん? 萩野比奈実(はぎのひなみ)さんのことか?」

「はい、彼女です」

「この家の番号は教えていないはずだが」

「私が教えました」

「俺の許可も無しにか?」

「はい、申し訳ありませんでした」

「……そうか」


 伊月さんは尋問はそこで終わらせて自分の部屋に戻ってしまった。もっと詰られるものと覚悟していたのに。

 最初は拍子抜けして肩から力を抜いた。だけどすぐに恐怖からハンドバッグを抱きしめるように抱える。


「奥様、大丈夫ですか?」


 正恵さんに背中を支えられながらリビングに向かう。ソファーに腰を落ち着かせ、正恵さんが淹れてくれるほうじ茶を待った。


「坊っちゃん! どこへ行くつもりですか!?」

「仕事だ」

「さっきのあれは何なんです!? 取り調べ室じゃないんですよ!」

「彼女は警視正の妻なんだぞ。安全のために必要なことをしたまでの話だ」