「警察が……社長を連れていきました!」
それだけ一気に伝えられる。周囲ではまだ走り回る音が響いて、遠くから微かに悲鳴や怒号が伝わってくる。
「……冗談でしょう?」
そうか、これドッキリだ。サプライズだ。フラッシュモブとかも聞いたことがあるし、きっとその類いだろう。
随分と大掛かりだなぁ。
「お嬢様、どうぞお気を確かに」
土門さんは私の両肩をつかみ、目を合わせてきた。黒目がちの瞳は血走って潤んでいる。
「そうだ、伊月さんは? 伊月さんなら何か知ってるはずでしょう?」
「それが……姿が見えないんです」
「姿が見えない? そんなはずないでしょう?」
こんな大変な事態になっているんだもの。伊月さんだったら、真っ先に場を静めようと率先して動いてくれるはずだ。
ああ、そうか。
「きっとお父さんを連れ戻しに行ってるのね。警察に連行されるなんて何かの間違いだもの」



