騙すなら墓場まで




 一瞬だけ周囲の音が遠くなって、自分の心臓の音だけが妙に大きく聞こえた。

 目の前に置かれた封筒は何も書かれていない。厚みはそこそこあって、透かしても見えないだろう。


「だから、直接会う必要があったんですね」


 口から出てきたのは当然の事実だった。メールや電話で渡すのは無理だし、郵送するにしても伊月さんや正恵さんに見られてしまうかもしれない。

 そこである疑問に思い至った。


「あの、今でも伊月さんと連絡を取り合っているんですか?」


 土門さんはゆっくり頷いた。そしてハンカチを出して額の汗をぬぐうと、お父さんの現状を語ってくれた。


「お父様の裁判はまだなんです。被害者だと告白する方があれから一気に増えて、証拠の整理に時間がかかってしまって……」

「そうですか、それで……」

「その件で、得留さんとは連絡を取り合っているんです」


 ああ、納得がいった。萩野さんが私に電話できたのは、土門さんがいてくれたからだ。