聞きたいことはいくらでもあるのに、喉に言葉がつっかえているみたいだ。
「その、結婚したって得留さんに聞いて」
「伊月さんに」
「ああ、直接じゃなくて土門さんから教えてもらったの」
懐かしい名前を聞き彼の姿が思い浮かんだ。最後にあったのは被害者への補償に関する相談だったけど、彼は元気にしているだろうか。
「土門さんは元気にしてる? 別の法律事務所に勤めるって聞いたけど」
「それなんだけど……やっぱり顧問弁護士を続けたいって、うちで働いてくれているの」
「そうだったの……」
土門さんは最後まで、「お嬢様のせいではありませんから」と慰めてくれた。そんなわけがない。私のこの生活は、犠牲になった大勢の方たちを踏みつけにして成り立っていたというのに。
私がそう反論すると、土門さんは一枚の書類を見せた。顔色は悪く、唇を真一文字に引き結んでいる。
「情報を全て渡すかわりに、私を罪には問わない契約です」



