騙すなら墓場まで




 それで簡単に舞い上がって、彼の気持ちを考えて一喜一憂していた。

 お父さんをどうやって逮捕するか考えていたとも知らずに。


『さて、続いて紹介するのは──』


 見計らったように呼び出し音が鳴った。思わず立ち上がったのと同時に正恵さんが電話に出る。


「はい、得留でございます。……はい……はい、少々お待ちください」


 何事かと近寄った私に、正恵さんは「萩野様という方からお電話です」と告げた。


「萩野さんから?」

「はい、奥様とお話したいことがあるとか……」

「……ありがとう。友人なの」


 訝しげな正恵さんに関係を教えると、彼女は神妙な顔つきで「失礼しました」とだけ言って受話器を渡してくれた。

 渡された受話器を耳に当てながら、両手で強めに握る。手のひらがうっすら汗をかいているような気がした。


「……もしもし?」

「もしもし、坂崎さん?」

「ええ、お久しぶり……」


 どうして得留の家にいることを知っているの?

 どうして連絡してきたの?