騙すなら墓場まで




 目を開けた。正恵さんが来る前に起きてしまった……と思ったけど、壁の時計は午前二時を指している。

 変な時間に起きちゃったな。

 フカフカの羽毛布団から抜け出る。柔らかすぎず硬すぎないベッドは快適なはずなのに、目が冴えてしまって眠れそうにない。

 ホットミルクでも飲んで、寝てしまおう。

 部屋を出てキッチンに向かう。暗闇で目が慣れずに時間をかけて歩いた。

 冷たいドアノブを回してやっとキッチンに着く。最新型のそこは正恵さんが私の城と呼ぶ場所で、こうして入れるのはこんな時間帯くらいのものだ。

 壁を探ってスイッチを探し当て、一瞬で明るくなる。何度か瞬きして目を慣れさせると、ようやく冷蔵庫から牛乳と、戸棚から蜂蜜を取り出した。

 小さな鍋に牛乳を入れて弱火にかける。近くにあるスツールに腰掛けて、真っ白な表面を見つめた。


「夢かも」


 呟きは鍋の中に落ちて、誰にも聞き届けられることはなかった。