騙すなら墓場まで




 かつては菓子パン一個でご飯をすませていたこともよくあったから、バランスの良い食事を出されると戸惑ってしまう。


「もったいない……」

「え、どうかなさいました」

「あ……その、食べてしまうにはもったいないくらい美味しそうだと思ったの。それだけ」


 正恵さんは聞くなり顔を輝かせ、「過分なお言葉、家政婦冥利につきます!」と鼻歌でも歌いそうな勢いでキッチンへと足を向けた。まだ仕事が残っているんだろう。

 優しいだけじゃなく、朗らかな人で良かった。

 この生活がいつまで続くのかわからないけれど、正恵さんが一緒なら乗り越えられそうだと思う。

 それにしても……。

 私は目の前の食事を見つめる。お医者さんや栄養士さんから太鼓判をおされるだろう理想のメニューは、きっかり一食分だ。

 わかってる、わかってるけれど。


「これで三食分は賄えるかな……」


 顎に指先を当てながらどう分けるか考えてしまう。