「……わかりました。お願いします」
「今後は要望があるなら正恵さんを通して伝えてくれ」
「正恵さん……?」
「うちの家政婦だ。長年ここに通ってくれている」
家政婦さん? 私が家政婦として扱われるんじゃないの?
頭の中は疑問でいっぱいだ。これじゃ普通の夫婦じゃないかと訴えたかったけれど、突然チャコールグレーのドアが開いてできずじまいになってしまった。
「坊ちゃん、おかえりなさいませ!」
人懐こい笑顔をした中年の女性がそこにいた。彼はしかめ面をしてため息を吐く。
「いい加減に坊ちゃんは止めろと言っているだろう」
「これは失礼しました。旦那様」
女性はすました顔で頭を下げると、私に向き直り優しく微笑んだ。
「お初お目にかかります、照島正恵と申します。これからは何なりと申しつけください」
「初めまして、これからよろしくお願いします」



