言ってからまた後悔した。どうするというのだろう。
父やあなたとの記憶を思い出しそうになっていたのを悟られたくなくて、深く考えずに今すぐ治せるわけでもない手指のことを持ち出しました。
そんなことを言えるはずもなく、私は無言のまま俯いているしかなかった。
「……できるだけ早く治せるよう、手配しよう」
伊月さんは素っ気なく返すと同時にドアが開き、伊月さんはスタスタと共用廊下を進む。私も遅れないようすぐに追いかけて感謝を伝えた。
「その、ありがとうございます。でもそこまでしてもらうわけには……」
「君は警視正の妻になるんだぞ、見た目にも気をつけてもらわないと困る」
伊月さんに淡々と諭されてハッとする。父に教えられたことと同じだ。
服装や姿勢が人に与える印象を侮ってはならない。頭のてっぺんから爪先に至るまで気を配りなさい。視線や話し方で、誰もが印象を変えてしまうから。



