騙すなら墓場まで




「あんな大急ぎで結婚しておいて、夫婦の時間もゆっくり過ごせないのは旦那様の落ち度です!」


 そう。彼女が言う通り、私たちは一週間で結婚したのだ。

 車で美容院やブティックに連れ回され、最後にはいかめしい日本家屋へと連れてこられた。気づいたときにはピカピカに磨き上げられた私を横に座らせて、伊月さんは養父母のお二人に私を紹介していた。


「何もしゃべるな。笑っていろ」


 耳元で囁かれた二つを忠実に守り、私は口角を不自然ではない程度に上げて目を細める。明日は顔面が筋肉痛にならないようにと祈りながら。


「まぁ、よくいらしてくれました」

「お疲れでしょう、どうぞ中へ」


 伊月さんの養父母はわざわざ門で待っていてくれた。お二人への挨拶もそこそこに労われ、奥の座敷へと通された。


「こちら、坂崎美節さんです」


 フルネームで紹介され、さすがに肩が強張る。心臓も早鐘のように脈打って、予想される嫌悪や侮蔑の眼差しに備えた。