騙すなら墓場まで




 それからの日々は怒涛のようだった。

 伊月さんの家で家政婦のようにこき使われていた……わけじゃない。そっちのほうがいくらか気が楽だったと思う。


「奥様、おはようございます」

正恵(まさえ)さん、おはようございます」


 得留家の家政婦である彼女がキビキビとカーテンを開けた。朝日が一気に差し込んで、思わず目を強くつむる。

 身体をグッと伸ばし、部屋をひっそりと見回した。

 ……昔の、自分の部屋よりも広い……。


「坊ちゃ……いえ、旦那様は今日も遅くなるので、先に休んでいてくれとのことです」

「そう……」


 正恵さんは視線を少し下げ、気まずそうに報告してきた。私はそれに頷くだけで、寂しいと思うよりもむしろ安心してしまう。


「新婚だっていうのに、もう少し早い帰ってくれても良いでしょうに……」

「大事なお仕事ですから。仕方ありませんよ」


 正恵さんは鼻を膨らませ、「いけません、奥様!」と首を横に振った。