「嘘じゃありません」
批判を避けたいだけだと罵倒されても、それだけは真実だった。信じてもらえないのはどうしようもない。何も知らず、知ろうともせずのうのうと暮らしていたのは私なのだから。
「だったら、俺にも償ってくれ」
「……それが、結婚なんですか?」
伊月さんの顔に影がさす。そのときに、苦しそうな表情をした……ような気がした。
「そうだ。君から全てを奪った俺に尽くせ」
そうか。
私からすれば彼は仇だ。その仇に嫁ぎ、言いなりにされる。これに勝る復讐はないだろう。
だけど、それは成立しない。
「……わかりました。あなたに尽くします」
私の承諾に指が離れた。名残惜しく思ってしまう自分が心から浅ましくて、伊月さんの姿が歪んだ。
「泣いて同情を誘うつもりか?」
「……いいえ」
「撤回はしないからな」
氷よりも冷たい声に、前を向いて唇を噛んだ。



