騙すなら墓場まで




「ネットカフェか、簡易宿泊所を探します。それから日雇いの仕事を探して──」

「特に決まってないわけか」


 伊月さんが徐に顔を向けた。冷酷で威圧的な空気に喉を締められている気分になる。


「それなら結婚してもらう」


 言われたことがすぐには理解できなくて、今度は私が口を開けたり閉じたりした。端から見ればとても間抜けだろう。


「それは、どういう意味ですか……?」


 やっと出てきた言葉には多くの意味が込められていた。どうして私なのか。どうして結婚を申し込んだのか。そもそもどうして結婚なのか。



 あなたは私が許せないんじゃないのか。



 伊月さんは手を伸ばして私の顎に触れた。そこから指を滑らせて、カサカサの唇をなぞる。


「君が許せない」


 泣きそうな声に、私まで目が潤んで鼻の奥がツンとした。


「だから、父親を奪った俺と結婚して……不幸になってもらう」