余剰分はいつ大事になるかわからないからと全額お渡しした。土門さんには、これから大変になるからいくらかでも持っておいたほうがいいと忠告されたけど。
全てが汚らわしく思えてしまって、使う気には到底なれなかった。
だったら、少しでも被害者を救済するために使いたい。
そうして無一文になった私は、地元から遠いこの地で清掃員として細々と暮らすことを選んだのだ。
「それで老人ホームで清掃員か」
「……本当に、仕事があるので」
罪悪感でこれ以上顔が見られない。私はダスターが入ったダンボールを両手で抱えた。少しでも伊月さんと距離が取れるように。
「それなら、会社がどうなったかも知らないのか」
「萩野さんのお父様が引き取ってくれました」
「……それは知ってるのか」
萩野さんは今も続いているたった一人の友人だ。彼女のお父様が会社を立て直してくれたおかげで、従業員たちは路頭に迷わずに済んだ。



