騙すなら墓場まで




 なるべくなら入居者がいないうちに部屋を掃除しておきたい。どうしても無理ならなるべく気配を消さないといけない。自分のテリトリーに他人がいる、というだけで落ち着かなくなる入居者もいるのだ。


「さて……」


 冬原さんが朝のレクリエーションに行っている間に、早々に掃除を終わらせることにする。彼は物の位置が少しズレただけで怒鳴り散らした過去があり、冬原さんの部屋は床だけに留めておくように、とここに入ってきたばかりのときに教えられた。


「あ」


 床用のダスターが切れていることに今更気づいた。一階の倉庫から取ってこないと。

 私は早足で階段を降った。施設長の部屋を横切るときに懐かしい声を聞いた気がしたけど、すぐに意識をダスターに戻した。

 倉庫でダスターを見つけて小脇に抱える。在庫が減ってきてるから報告しないといけないなぁ、とぼんやり考えながら倉庫を出た。