他人から見れば、ずいぶんと回り道をしてきたように見えるだろう。
相手を自分のエゴで騙し、自分の気持ちさえ騙して息をしていた。何かがかけ違っていたら、私たちは一生騙し合いをしていたに違いない。
それでも私たちにはこれが、最短の距離だった。
「その」
「はい」
「子どもの計画はどうする」
「子ども……」
伊月さんと私の子。
男の子だったら伊月さんみたいに警察官を目指すのかもしれない。
女の子だったらオペラを好きになってくれたら嬉しい。
膨らむ想像のままに「すぐにでもほしいです」と返せば、伊月さんは低く唸った。
「しばらく二人だけの生活を楽しみたい……」
「うーん……じゃあ、一年だけそうしましょう」
一年経つ頃に産婦人科で相談するかどうか話していると、ドアが勢いよく開かれた。
「警視正! 時間間に合いませんよ!……」
植田さんと私たちが固まった数秒後、鬼の形相で追いかけっこを始める伊月さんを、私は笑いながら追いかけるのだった。
〈了〉



