騙すなら墓場まで




 私が密かに決心を固めていると、ドアを控えめにノックする音がした。


「はい」


 スタッフさんが何か確認しにきたのだろうかとドアを開ける。そこには萩野さんが立っていた。


「萩野さん……」


 彼女や彼女のお父さんにもどれだけお世話になったかわからない。伊月さんへの恩だけでなく、萩野さんへの恩でも私は着膨れしている。


「おめでとう、これからもよろしくね」

「ありがとう、本当に何てお礼を言えば……」


 萩野さんは穏やかに微笑む。

 清楚な青いドレスを身にまとった彼女が聖母に見えて、メイクが崩れてしまうとわかっているのに視界が揺らいだ。


「泣かないで、まだ始まってもないでしょう?」


 萩野さんはそっとハンカチを目元に当ててくれた。彼女の言う通りだ。しっかりしないと。


「どうぞ入って」


 私は彼女を立たせっぱなしだと気づいて、部屋へと招き入れて椅子を勧めた。