騙すなら墓場まで




 今日は人生で最も緊張する日だ。

 私はウエディングドレスに身を包み、一年前の自分を思い出していた。彼に甘い声で「美節さん」と呼ばれ、指輪の交換をし、キスを交わす。そんな妄想をしていたのが昨日のことのようだ。

 それがあと数分後には現実になる。


「お母さん、お父さん、私……今度こそ本当に結婚するよ」


 鏡の中の私はぎこちなく微笑んでいた。土門さんがお父さんの代わりにバージンロードを歩いてくれるとはいえ、周囲からどう思われるかはやっぱり心配だ。

 強めの日差しが降り注ぐ初夏の日は、このプライベートルームにも容赦がなかった。生命力に溢れた緑が生い茂り、今年の夏の暑さを予感させた。


「私、これからは伊月さんとまず話し合うことにするよ」


 大切なのは話し合うことだけど、話せる雰囲気を作るのも大事だ。思い込みや勘違いでお互いすれ違ったまま、悲劇が生まれるのはもううんざりだった。