騙すなら墓場まで




 私からすると好都合だったけれど、伊月さんからすればまさか出ていく準備をしているなんて思ってもいなかっただろう。


「ずっと聞きたかったんだが、なぜあのタイミングだったんだ?」

「植田さんです」

「……あいつが何かしたのか……?」


 地を這うような声が這い上がり、心臓ごと身体が縮み上がった。


「いえ、たぶん私の勘違いです」

「勘違い?」

「〈さくら園〉の入居者さんに似ていて、名字も同じだったもので……」


 もし私の想像通り彼が植田さんのお孫さんだったら、何かの拍子に私の過去が明らかになるかもしれない。

 そうなったら、伊月さんに迷惑がかかる。だったら、その前に別れてしまおう。

 包み隠さず説明すると、伊月さんは頭を抱えた。


「確かに……あいつはのべつまくなしにしゃべる癖があるから」

「伊月さんがモテるのも教えてくれましたからね」

「忘れると約束しただろう」