「優しい人だから、酷いことができないんだと思ってました」
「俺は聖人君子じゃないぞ」
「秘書だったとき、騙していたとはいえ良くしてくれましたから」
「……今までよく詐欺に引っかからなかったな」
伊月さんは身体を離すと、私の肩をつかんで目を合わせた。無意識に両手を組む。
「手紙は……萩野さんに会ったときにもらったのか」
「はい」
「やっぱり俺のことが嫌で、出ていかれたのかと」
「とんでもない!」
あの尋問の裏でそんなことを考えていたのか、と衝撃を受けた。あのときはただ恐ろしくて、どう説明するかしか頭になかった。
「あの手紙がバレたら、私のほうこそ見限られると思って……手紙の隠し場所を探しているうちに寝入ってしまったんです」
「そうか、ソファーで寝ていたのは……」
「ええ……結局ずっとサイドチェストに入れたままにしました」
「それで出ていくときに持っていったのか」



