「そうね、健太も三人で一緒に来てくれるわ。きっと」
お孫さんの名前を嬉しそうに呟きながら、植田さんは施設に戻っていった。彼女は玄関口に毎朝やって来て、息子さんが迎えに来たら教えてくれとお願いするのが日課になっている。
彼女の北欧風カーディガンが小さくなるのを見送って、私は掃除を再開した。
春先とは言うものの朝はまだ空気がどことなくひんやりしている。息を吸うと鼻の奥がツンとした。
──あの日から、もう一年経ったんだ
人生が一変してしまった日を思い出しながら、小さなため息を漏らした。
あれから何事かと駆けつけた友人たちにより、私はどうにか着替えて警官たちに連行された。取り調べ室では何度も父の不正について詰問されたけど、私は何も知らなかったし、繰り返しそう伝えた。
そのときに、父の罪状について知らされた。収賄や詐欺、脱税……こうして挙げるだけでも、今でさえクラクラしてしまう。



