伊月さんは手に四角い紙を持ちダイニングに戻ってきた。見覚えのある紙だな、と思っていたら、テーブルに置かれたそれを見て、血の気が引いた。
暗くなった視界はすぐ元に戻ったけれど、今度は身体の震えが止まらなくなった。
「……病院で、ポケットに入っていたと」
何か、何か言わなくちゃ。そう思うのに唇どころか舌まで凍りついたままだ。
「坂崎からだな」
これは問いかけの形をした、確認だ。
目も合わせられず、微かに頭を上下させるしかなかった。
「顔を上げてくれ」
恐ろしかった。どんな目で伊月さんから見られるのか。軽蔑か、嫌悪か。それでも無感情か。裏切り者と罵られるのか。
それでも。
私は歯を食いしばって顔を上げた。どんな罵倒も受け入れるつもりだった。
「そんな顔をしないでくれ」
「……」
「怒ったりしてないから」
伊月さんの途方に暮れたような目に、涙が頬を伝うのを感じた。



