騙すなら墓場まで




 私はダイニングテーブルで伊月さんを待っていた。レジデンスの、広く清潔な部屋は針が落ちる音が聞こえそうなほど静かだ。

 覚悟を決めたとはいえ緊張する。退院の日、伊月さんにレジデンスで話し合いたいと伝えたら、彼はあっさり承諾して時間を取ってくれた。

 今まで有給を全く使ってなかったから、これを機にまとまった休みを取るよう上層部からお説教じみた通達があったそうだ。



 つまり、これからあと一週間はお休みになる。



 正恵さんは先ほどから買い物に出てしまった。

 ネットで注文すれば好きなだけ届くのに、「ああ! あたしとしたことが買い忘れてしまいました!」と大声で玄関まで走っていったのがほんの数分前のことだ。

 その背中を二人してなんとも生ぬるい顔をして見送ると、伊月さんは伊月さんで「見せたいものがある」と自室に消えていった。

 私は煎茶を淹れて彼を待ち、今に至る。