騙すなら墓場まで




 静かに言い切った正恵さんに冷や汗が背中を流れた。これは相当まずい事態になっている。


「とりあえず今は休みます」

「そうですね、退院してからにしましょう」


 正恵さんが優しく笑う。それと同時にドアを軽くノックする音がした。


「得留さん、担当の梅野です。説明をさせていただきたいんですがよろしいですか?」


 私が「どうぞ」とお腹に少し力を込めて返すと、梅野先生は丁寧にドアを開けた。ゆったりとした恰幅の良い中高年の女性で、眼鏡の奥にはつぶらな瞳が穏やかな光をたたえていた。


「入院前に簡単な検査をさせていただいたんですが、背中の打撲と脳震盪がありました」

「それで三日も……」

「あらためてCTスキャンで検査させていただきたいんですが、できるのが二日後になってしまうのですが──」

「大丈夫です。明後日ですね」

「はい、ありがとうございます」