騙すなら墓場まで




 でもどうしてその手段が結婚なんだろう。普通に警護するのでは何か支障があったのか。


「それは……」


 伊月さんはあちこちに視線をさまよわせながら、病室をぐるぐると歩き回った。

 いつもきっぱりとした物言いなのに珍しい。


「えっと……伊月さん?」

「待ってくれ、もう少しでまとまるから」


 右の手のひらを見せられて、左手で目頭を押さえている。

 そこまで言うなら大人しく待とう、と口をつぐんだ。まだ私の知らないことが隠されているらしい。


「旦那様、奥様のご様子は──」


 スライド式のドアがノックと共に少しだけ開けられる。見知った顔がひょっこりとのぞいて、目の前が一瞬でにじんだ。


「奥様! 目を覚まされたんですね!」

「正恵さん……」


 正恵さんは大きなバッグを小脇に抱えて部屋に入ってきた。鼻をすする音が時折聞こえてきて、私も鼻の奥がツンとした。


「正恵さん、後は頼む」

「承知いたしました」